インドネシアのネット広告市場に見るナンバーワン企業の法則

みなさん、「ナンバーワン企業の法則―勝者が選んだポジショニング」という本をご存知でしょうか?原題は「The discipine of market leaders」でマイケル・トレーシーさんとフレッド・ウィアセーマさんによって書かれたものを大原進さんが翻訳しています。アマゾンで検索してみたら、もう既に絶版になっており、中古で5000円ぐらいするんですね…。

 

ナンバーワン企業の法則

 

 

私がはじめてこの本に出会ったのは大学3年生の就職活動時期で、その後社会人3年目でもう一度読み直したきりでした。そして長い年月が経って、最近インドネシアのネット広告市場を説明する中で、本書に出てくるナンバーワン企業が選ぶ3つの価値基準が、しっくりくるので、このブログでもご紹介しようと思った次第です。

 

 

ナンバーワン企業の3つの価値基準とは?
1.    Product Innovation(プロダクト・イノベーション)
2.    Operational Excellence(オペレーショナル・エクセレンス)
3.    Customer Intimacy(カスタマー・インティマシー)

 

 

私は就職活動時期に、某IT企業のセミナーでこの3つの価値基準の説明を受けたのですが、凄く分かりやすかったので10年ちょっとたった今でも鮮明に覚えています。

 

プロダクト・イノベーションを発揮しているのは、例えばマイクロソフトやインテルのような新しいプロダクトを出し続けることで市場を圧巻している企業です。当時セミナー講師のK先生は「愚民どもよ、我らのプロダクトを使うが良い」という面白い表現をされていましたが、本当にそうは言っていなくても、それぐらい言えるような企業です。Google(グーグル)もそれに入りそうですね。

 

2つ目のオペレーショナル・エクセレンスを発揮しているのは、例えばマクドナルドです。K先生は、「高校生のアルバイト中心でも店舗がまわる仕組みを作ったことは素晴らしい。例えば銀行が高校生だけでまわるのか?」とおっしゃっていましたが、まさに卓越したオペレーション体制を築いている企業のことです。他には、質の良い家具を低価格で提供するオペレーション体制を確立させたイケアが入るのではないでしょうか。

 

最後に3つ目のカスタマー・インティマシーですが、例としてリッツカールトンホテルの名前をあげられていました。顧客の好みを記録して、顧客に驚きと感動を与え、親密な関係を築き上げる企業のことです。サービス業に多そうですが、ファッションブランドのエルメスも同じ商品を修理して長く使ってもらうという顧客関係を築くので、これに当てはまると思います。

 

 

では、これらをインドネシアのネット広告企業に例えるとどうでしょうか?

 

 

1.    プロダクト・イノベーション
こちらは本当に「愚民どもよ、我らのプロダクトを使うが良い」がぴったりなのですが、facebook(フェイスブック)とグーグルの広告のことです。フェイスブックはパーソナルデータを用いて市場を圧巻し、グーグルも検索連動型広告だけで無く、リマーケティング広告、ネイティブ広告、動画広告など網羅し、両社とも新しい広告機能をアップデートし続けています。東南アジアにおいても、その強さは目を見張るものがあり、APACのネット広告市場の51%は彼ら2社によって支配されているという調査データも出ています。あともう1社あげるとすればCriteo(クリテオ)社です。彼らはダイナミックリターゲティングというプロダクトで、インドネシアの上位EC企業のほとんどを顧客としています。フェイスブック(米)、グーグル(米)、クリテオ(仏)、みんな欧米企業ですね。

 

2.    オペレーショナル・エクセレンス
インドネシアにおいて、このポジショニングに関しては、日系ネット広告代理店が力を発揮しているように思います。前述のフェイスブックとグーグルの広告ですが、この広告を最適に運用するためのオペレーション体制を築く企業がいます。フェイスブック広告はターゲティングの設定技術だけで無く、バナーや動画などどういったクリエイティブを用意するかも重要です。ある日系広告代理店は、フィリピンにクリエイティブ制作部隊を作り、日夜ABテストで効果改善を行っていると聞きます。グーグル広告にしても、日々のキーワード設定もそうですが、目まぐるしく変わる広告機能やケーススタディの情報収集、そしてそれら新しい知識を現場の運用スタッフへの落とし込むオペレーションが非常に重要です。

 

3.    カスタマー・インティマシー
最後のカスタマー・インティマシーですが、インドネシアで儲かっていると言われているネット広告企業、デジタルーエージェンシーのほとんどがこのポジショニングをとっています。例えば、世界大手の広告代理店WPPグループやオムニコムグループ、日本の電通もそうですが、グループ傘下にデジタルエージェンシーやデジタル専門部署を持っており、このポジショニングで大きな売上を上げていると考えられます。外資系だけでなく、ローカル系も同じです。私は採用活動と情報収集のために、100人近くのマネージャーや営業担当とリンクトインを通じて会って来ましたが、みな口を揃えて顧客とのリレーションシップが大事だ、それがインドネシア独特のカルチャーだと言います。

 

 

もう少しインドネシア独特のカスタマー・インティマシーについて、お話しましょう。

 

 

私が会った100人近くのマネージャーや営業担当が言う顧客とのリレーションシップとは?

 

・毎日ワッツアップやBBMで、挨拶やジョークを送る
・たまにドーナツ持参でオフィスに訪問
・誕生日にはお祝いのメッセージとケーキを贈る
・クライアントの担当者が欲しいもの(例えば、靴とかコンサートのチケットとか)をプレゼントする
・○○を渡す

 

私の予測では、ざっくり約1000億円のインドネシアネット広告市場のうち、80%はブランディングを目指した広告活動で、ブランディング目的ですと、どのターゲット層に何のメッセージをどれぐらいのボリュームに届けるかが重要になってくるので、広告効果が測りづらく、差別化が難しくなります。ネット広告だと、指定のターゲティングでボリュームと予算を設定して終わりで、非常に簡単です。そこで、差別化要素として重要となってくるのが、前述の顧客とのリレーションシップです。(○○はここでは言えませんw)

 

個人的には、真の顧客は広告主では無く消費者なので、市場の競争が激しくなると、このモデルは長くは続かないと考えています。ただ、現状インドネシアの経済は成長していますし、とりあえず指定のターゲット層への認知度を上げておけば、ある程度成長は見込めるという状況です。

 

この顧客リレーションシップ活動によって、インドネシアでは100を超えるデジタルエージェンシーが存在しています。量産のロジックとしては、デジタルエージェンシーからの独立です。まずは、デジタルエージェンシーで経験を積んで、顧客リレーションシップを育てることができたクライアントを引き連れて独立するのです。複数社引き連れて独立することができれば、インドネシアは人件費が低いので、彼らにとって十分な利益を確保することが容易です。

 

 

最後に、アドウェイズはと言いますと…スローガンに「なにこれすげーこんなのはじめて」とあるように、なにこれすげーこんなのはじめてなプロダクトを作って、プロダクト・イノベーションに挑戦しています。

 

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インドネシアのモバイル市場2017

つい先日、アドウェイズインドネシアブログでインドネシアのモバイル市場インフォグラフィックの最新版、2017年版が更新されたので、こちらでもまとめておきたいと思います。

 

IMM2017

 

2016年は前年と比較して、インドネシアのモバイルマーケティング市場、モバイル広告市場において、そこまで大きな変化が無かったというのが個人的な感想です。もちろん、大きくはなくとも変化(成長)はあると思っています。インフォグラフィックにあるようにモバイル端末の普及台数は3億3000万台を超えるまでに増え、書かれてはいませんがスマホ普及台数も1億台まで届きそうなところまで来ていると言われています。実際にfacebook広告のスマホ端末ターゲティングをインドネシアでセットしてみると、既に9000万台を超える配信先が表示されます。

 

IMM2

 

スマホ普及台数の増加に合わせて、EC企業のモバイル広告投資も増加しています。インフォグラフィックには2016年に最もダウンロードされたECアプリのランキングがありますが、ここにある上位のEC企業の広告はよく見かけますし、個人的に実際のアクティブユーザー数もこのランキングに近いのではないかと思っています。

 

IMM3

 

そして、徐々にではありますが、モバイル決済も増えていると見受けられます。クリテオ社が発表したデータでは、インドネシアでは30%の決済がモバイル経由になってきたとありますが、某EC企業の方によると、2017年に入って約半数の決済がモバイル経由になっているとのことでした。

 

IMM4

 

一言で表すと、2016年は「よりモバイルシフトが進んだ」という年と言えるのではないでしょうか。しかし、冒頭に述べたように大きな変化とまではいかないと思うのです。そう思う一番の理由は、顧客単価の変化です。モバイルインターネットを通して、お金を払う人はもちろん増えているように見えるのですが、顧客単価に大きな変化(伸び)が無いように見えます。

 

 

例えば、分かりやすい例がモバイルゲームです。日本では、モンストやパズドラに課金しまくる人がたくさんいることでしょう。私は仕事柄多くのデータを見たり、人から話を聞きいたりしていますが、インドネシアで課金するのは、人口のわずかなパーセンテージを占める上位所得者で、ほとんどの人は無課金でゲームを楽しみます。そして、上位所得者層は、iPhoneを使っていることが多く、実際iOSの平均顧客単価は伸びているように見受けられます。一方、スマホユーザーの約8割を占めるAndroidの平均顧客単価はあまり変わっていないように見受けられるのです。

 

 

私は市場全体が大きく成長するためには、大多数を占める中間層の成長が不可欠だと思っています。(スマホを所持できる時点で下層では無いため、中間層より下の話は省きます)

 

 

例えば、私が持っている予測データを用いてご説明しましょう。インドネシアの1年間のAndroidアプリとiOSアプリの課金金額が200億円だとしましょう。AndroidユーザーとiOSユーザーの合計は8500万人とします。

 

 

私の感覚では、
Androidユーザー8000万人×平均顧客単価200円/年
iOSユーザー500万人×平均顧客単価800円/年
という予想です。

 

 

無課金ユーザーも人数に入れて平均顧客単価を算出しているので、説明が分かりにくいかもしれませんが、この年間200円しか使わない層が、単純に400円使えるようになれば、一気に360億円マーケットに成長します。ここまで成長すれば、私も大きな変化と認めざるをえません。ただ、現状この200円ユーザーが成長していないように見えるのです。アプリの課金金額はゲームがほとんどなので、この例はゲーム市場を使って中間層を説明したような形ですが、ECにおいても近い状況が起きているように思うのです。完全に私の予測です。もっと言うと、インドネシア経済全体とすら思ったりもします。中間層である200円ユーザーは、ローンで車とかバイクを買って、家賃も払って結構ギリギリの生活です。お金持ち800円ユーザーは、オーナービジネスや不動産投資など野心を持って資産を増やして行きます。華僑系の方が多いです。結構みんな海外留学をされていたりします。

 

 

野心的、華僑という言葉出てくると、今度は多様性の国インドネシアの歴史的背景の話にそれて行きそうですので、本日はここで閉めたいと思います。

 

 

まとめると、「インドネシアのモバイル市場は爆発的に成長しているというわけではないと思う。でも、結構モバイルシフトが進んでいる。しかしながら、そもそも中間層が成長しなければ、国全体としてマーケットの成長が厳しいのでは?」というお話でした。

 

 

最後に、これはあくまで現状までの市場データを見て、個人の予測と感想を述べただけに過ぎませんので、現時点で私の知らない市場爆発が始まっているかもしれません。それはそれで嬉しいです(笑)。ただ、着実に少しずつでも、日々前を向いて前進していると感じています。インドネシア!