スタートアップ 中国 外食産業

中華風林火山のコーヒースタートアップ

前回前々回とインドネシアのモンスターフランチャイザーに注目して、1年間で300店舗に拡大したコーヒーショップ「Kopi Janji Jiwa」や、コーヒーショップ「Kedai Kopi Kulo」の成功体験をもとに韓国料理や日本食まで事業を拡大しているKulo Groupなどをご紹介させて頂いたが、本日は世界に目を向けて、桁外れの成功事例を紹介したい。

場所は、中国。名は「瑞幸咖啡(Luckin Coffee)」と呼ぶ。

2017年10月に会社を設立し、1店舗目のコーヒーショップは2018年の元旦にオープンというまだ新しい会社である。

Luckin Coffeeホームページより

まだ新しい会社なのだが、なんと2019年5月、会社設立18ヶ月という史上最短記録で米国ナスダック市場に上場を果たし、店舗数は1年目の2018年に2000店舗、2年目は中国スターバックスの4000店舗を超えると豪語し、2019年7月現在で3000店舗のところまで来ている規格外の成長スピードである。「Kopi Janji Jiwa」の1年300店舗が霞む程である。

2019年8月14日、Luckin Coffeeが上場後初めて公開した財務報告書によると、第2四半期の売上は9億910万元(約136億円)で、前年比648.2%増。そのうちコーヒー製品の売上は8億9700万元(約135億円)で、商品の月平均売上は2760万元(約4億1640万円)。純損失は前年同期の3億3300万元(約50億円)の約2倍に相当する6億8130万元(約103億円)となった。Lucking Coffeeの累積ユーザー数は、前年同期の290万人から2280万人に急増している。全て規格外の数字である。

この規格外の数値を「中国だから」と一言で片付けるのは非常に勿体無い。急成長の裏側に、長く綿密な準備があるのだ。ちょうど前回の記事で筆者が紹介した4つの手法が見事に実践されている。

  1. 店舗スペースの最小化
  2. オペレーションの最適化
  3. 規模の経済
  4. ITの活用

やはり、中国でも店舗を拡大するとなるとボリュームゾーンを狙うわけである。スターバックスの店舗数を超えるのに、スターバックスと同じ戦略をとって良い訳が無い。Luckin Coffeeを創業時から支えてきた投資ファンドCEOのインタビューが凄く参考になるので下記に引用しておく。

「従来型のコーヒーチェーンは、コーヒー1杯のコストが21~22元(約330~350円)。うち10~11元(約160~170円)が店舗賃料で、5~6元(約80~95円)が人件費を含む運営コスト、残りの4元(約60円)が製造コストだ。瑞幸咖啡も製造コストは同じだが、店舗賃料と運営コストが大幅に下回り、1杯のコストは13元(約200円)に抑えている。この差額をそのまま利益にすることも可能だが、これは現在1800万人の有料会員数をこのまま維持するのか、あるいは8000万、1億まで伸ばすのかどうかによって決まる」

https://36kr.jp/23173/

Luckin Coffeeの特筆すべきビジネスモデルの1つが店舗スペースだ。彼らはオフィスビル1階の小スペースでも出店できる。そして、もう1つ重要なのがITの活用だ。Luckin Coffeeのコーヒーを飲みたければ、アプリで注文しなければならない。アプリで先に注文しておけば、列に並ぶ必要もない。コーヒーショップはただのピックアップスペースに変わる。あるいは、自身がピックアップに行かなくても、インドネシアのようにデリバリーに頼むことも可能だ。

アプリに注文を集約させることは、顧客だけで無く社内のオペレーションにとっても利点が多い。売上や顧客データを1つのデータベースにリアルタイムで集めることができ、いつどこで誰が何をどれだけ買っているのかをすぐ分析し、そのデータを集客や店舗展開、コスト最適化に瞬時に活用できる。先ほど引用した記事のインタビューによると、彼らは会社設立の1年以上も前からそのようなシステムを作るべく、綿密な打ち合わせを積み重ねて来たようだ。綿密な下準備のもと、戦いが始まったら風のようなスピード。中国古典の孫子の兵法、風林火山を彷彿とさせる。

孫子の兵法書

インドネシアにもインドネシア版Luckin Coffeeと言える2社のコーヒースタートアップが存在する。

「Fore Coffee」と「Kopi Kenagan」である。両社とも、小スペース店舗とアプリ注文という共通点を持っており、それぞれ億単位の資金調達を行っている。次回は舞台をインドネシアに移してこの2社について解説して行きたいと思う。

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