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なぜ海外進出は失敗するのか?(後編)

第二の失敗要因は「アクション」である。これは、第一の情報収集に基づいて、しっかり戦略を立て、それを実行することである。第三の失敗要因は第二に関連しているので、一気に紹介するが、第三の失敗要因は「スピード」である。つまり、アクションをできる限り速いスピードで行うということだ。

この第二と第三には、組織作りが大いに重要となってくる。アクションとスピードの質を上げるためには、海外事業に適した組織作りが必要なのだ。特に、日本本社を含めた組織連携が大変重要である。よく海外駐在員の間で「OKY」という言葉が流行った時期があったが、意味は「O(お前が)K(ここに来て)Y(やってみろ)」。現地駐在員が、現場のことも分からずに日本本社から指示を出す上司に向かって、発したい言葉である。海外で、特にインドネシアのような発展途上国では、日本では考えられないような事件が多発する。そんな現場で、毎回事件の度に本社に確認して指示を仰ぎ、さらに現場の分かっていない指示内容が飛んでくると、現場社員はOKY!と叫び出すわけだ。解決方法としては、現場にある程度の決裁権を与えるような組織を作ることである。海外部隊を作る際、隊長に権限を与え、お前で失敗したら仕方ない!と言えるほどのエース人材を投入すべきである。

エース人材が現地で行う重要なアクションの1つに、セールスとマーケティング活動がある。インドネシアの日系企業あるあるだが、現地で豪華に商品発表会を行うと、商品が勝手に売れて行くと思われている節がある。おそらく「我が社の商品は優れているから、現地で発表してメディアが取り上げてくれれば、認知が広がって売れるに違いない」とでも考えているのだろう。実際、現地の大手企業や他国からの進出企業も豪華に商品発表会をしている。ここでお伺いしたいのが、後発で発表したあなた方の商品が、先行している企業と同じアプローチ手法で勝てるのか?である。商品発表会でも、他のどんな販売手法でもそうだが、同じアプローチ手法で勝つ方法があるとすれば、先行している企業の倍以上のセールス・マーケティング予算をかけた時か、iPhoneが世に出た時のようなイノベーティブな新商品がある場合に限る(ただ、そのiPhoneであっても、同じアプローチは取っていなかった)。うちにはそんな予算はない!という声が聞こえてくるかもしれないが、そこで活躍するのが、エース人材である。現地で集めた情報から、どうすれば少ない予算で勝てるのかを考える。戦国時代に例えるならば、織田信長はどのように3000人の兵力で、今川軍25000人を打ち倒したのか?貴社の桶狭間(勝算のあるニッチマーケット)はどこで、どのように奇襲(顧客アプローチ)を仕掛けるのか?である。織田信長が率いるような中小企業、ベンチャーやスタートアップサイズの組織でも、今川軍のような大企業を打ち破る事例はいくつも存在する。

『尾州桶狭間合戦』歌川豊宣画

組織作りに話を戻すと、大企業と中小企業では起きる問題も変わってくる。先ほどのOKY問題も、大企業の間で流行っている言葉で、中小企業、特にベンチャー企業やスタートアップではそこまで聞いたことがなかった。実際、筆者も駐在員時代OKYと叫んだ事は一度もない。逆に、中小企業、ベンチャー、スタートアップに多い問題が、事業サイドでは無く、総務・人事・経理関係である。大企業で無い限り、駐在員は1人とか2人だが、その少人数に日本本社とやり取りをしなければならない総務・人事・経理関係の報告業務が降りかかってくるのである。筆者の前職だと、日本本社にサポート部署があったが、日本本社にそのようなサポート体制が無いと、駐在員は事業に集中できず、事業以外の業務に押しつぶされてしまう可能がある。

サポート体制に関して、日本本社では一悶着あるものだろうと予想する。発展途上国に進出している企業は特に。理由は、すぐに売上や利益を生み出すわけでは無いからである。事業責任者が集まる会議で、なんで数字が小さい海外事業のサポートをしなければならないのかとなってしまう。投資家にもなぜ力を入れるのか説明しなければならないかもしれない。

ここで最後の、第四の失敗要因「団結力」である。

海外進出、そして海外で成功するのは一筋縄では行かない。全社一丸となって戦う必要があるのだ。社長の鶴の一声で海外進出が決まったり、あるいは冒頭の進出理由の3番目「海外の顧客やパートナーから進出依頼が来た」ケースで他人任せの進出になってしまうと、団結力も生まれず、成功までの熱量を高めるのは困難である。進出すると決まったら、責任者を選任し、社長や担当役員から社内で説明し、本社からサポート体制をしっかり作ることができると、成功の可能性が上がるに違いない。

第35代アメリカ合衆国大統領のジョン・F・ケネディは、大統領就任の翌年、国民に向けて人類初の有人月面着陸「アポロ計画」について演説を行った。「We choose to go to the moon(我々は、月に行くことを決めた)」という演説の中の一節は非常に有名である。アポロ計画に必要な予算は総額約250億ドル。ピーク時にはアメリカ国家予算の約2.5%に相当する年間約30億ドルを投入したとも言われている国をあげた一大プロジェクトである。アポロ計画は、ピーク時には40万人の従業員を雇用しており、アポロ計画をサポートしていたのは2万以上の企業や大学に及んでいた。そして、1969年7月20日、宇宙飛行士ニール・アームストロングおよびバズ・オルドリンがアポロ11号で月面に着陸したことにより、ケネディの公約は達成されることになる。偉大な目標達成の裏には、たくさんの人々の団結とサポートがあったのだ。

偉大な目標達成の話の後にアレだが、裏技的な手法も紹介しておく。「特命係方式」である。この手法は途中触れなかった「もしエース級の人材が社内にいなかったら?」という問題も解決できる。特命係という名前から勘の良い方はお分かり頂けると思うが、社長直属の秘密組織を作って、秘密裏に海外進出を進める手法である。この場合は、特に社内からエース人材を引っ張らなくても、進出先に詳しい人材をヘッドハントし、社内の限られた人に情報公開し支援させることもできる。よって、社内で一悶着することも無く、事業の芽がでるまで潜伏させておくことも可能だ。もっと秘密裏に行う場合は、社長のポケットマネーで海外に会社を設立するか、投資するかで、本社との資本関係無く実行することもできてしまう。もし、海外進出が失敗しても、社長個人の負担だけで済ませることもできる。月に行くような大きなスケールのことはできないが、海外事業のスモールスタートには個人的には良いのではないかと考えている。

なお、特命係でピンとこなかった場合は、邦画なら「特命係長 只野仁」か「相棒」、洋画なら「ミッション:インポッシブル」をお勧めする。

tv asahi

最後にもう一度、4つの失敗要因をまとめておく。

  1. 情報収集
  2. アクション
  3. スピード
  4. 団結力(or特命係方式)

サクッと説明してきたが、1から4までを失敗しないように実行していくのは簡単なことでは無い。また、実行できたとしても成功が約束されているわけではない。では、なぜそこまでして海外進出をしなければならないのか?国内市場で十分では無いのか?それぞれ企業にとっては、置かれてる状況や環境が違って、様々な解があるだろう。

では、先ほどのアポロ計画の話もそうだが、なぜ人類は宇宙を目指すのであろうか?そのままGoogleで検索すれば、いくつか博識のある方々の意見が出てきてて、宇宙には地球に無い物質があり、見つかると科学が進歩するというようなことが書いてあった。大変素晴らしいことだと思う。

筆者の個人的な解を述べると、「どんな分野でも苦難困難に挑戦し続けることは人類を前進させることに繋がる」ということだ。その挑戦者は企業も人も同じで、それぞれ状況が違うので、それぞれの挑戦があって良いと思う。ジェフ・ベゾスやイーロン・マスクなど、ビジネスの世界的成功者にとっては、宇宙への挑戦が一番の苦難困難なのだと思う。ある人にとっては、日本一を目指すのが一番の挑戦なのかもしれない。宇宙一でも世界一でも日本一でも関西一でも、順位がつかないものであっても、一生懸命苦難困難に立ち向かうことで、周りを勇気付け、新たな挑戦者を生み出し、正のスパイラルが生まれていく。そしてそのスパイラルの一つ一つは、人類を前進させる小さな歯車になっていく。どんな挑戦でも良い。そういう意味で、海外、特に発展途上国は、先進国では味わえない苦難困難がうじゃうじゃ待ち受けていて、非常に挑戦しがいのある場所である。一応断っておくが、全員が挑戦者であるべきとは思っていない。人は、自らリーダーシップをとってやりたいタイプと、人がやっていることをサポートするタイプに分かれるからだ。いろんな役割があって、社会が構成されている。

最後の最後で、「なぜ海外進出は失敗するのか」が「なぜ人類は宇宙に行くのか」に話がそれてしまったが(笑)、今後も海外進出する企業や海外挑戦する人々の支援ができるような発信を続けていきたい。

特命係長の任命もお待ちしている(笑)。

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