本日は、久しぶりにインドネシアのネット広告市場について書いていきたい。
前回の2017年5月に公開した「インドネシアのネット広告市場に見るナンバーワン企業の法則」から2年と4ヶ月経っているが、新たなプレイヤーが表れて一気にマーケットをひっくり返したなど大きな変化はない。前回の記事で言うところのプロダクト・イノベーションの力がより強固になって来ているようである。その中心は、GoogleとFacebookである。
まず、実際にインドネシアのネットユーザーが最も多く集まる場所の広告を見てみよう。SimilarWebによると、月間訪問者数(PCとモバイルで別カウント)が2億7000万を超える「Tribunnews.com」、1億7000万を超える「detik.com」を見てみると、トップページには、トヨタ、ダイハツと言った自動車メーカーの広告、ユニコーン企業のオンライントラベルエージェントのTraveloka、大手の家電メーカーや物流会社、政府系案件の広告まで、有名企業の広告がずらっと並ぶ。しかし、そのどれもがGoogle社が提供する広告プラットフォーム経由である。2-3年も前だと、Googleを経由しない純広告も少しはあったと記憶している。
では、数字で見るとどうだろうか。
Stasiaの2019年9月時点の最新データによると、2019年のネット広告市場規模予測は35億9700万米ドル(約4000億円)となっている。4000億円のうち、一番のシェアを占めているのが14億4600万米ドル(約1590億円)のソーシャルメディア広告だ。インドネシアではfacebook、Instagram、YouTubeでソーシャルメディアの市場の約8割を占めているので、1100億円の8割はfacebookとGoogle陣営で生み出していると言っても過言ではないはずだ。
次に市場規模9億9820億米ドル(約1100億円)の検索関連広告と7億2220億米ドル(約790億円)のバナー広告であるが、ここはGoogleが圧倒的に強い。インドネシアではここ数年ずっとGoogleが90%以上の検索エンジンシェアを維持している。バナー広告は先ほど見た通り、どこのバナーもGoogleのリンクだらけである。
Google、facebookが強いのはもちろんインドネシアだけに限ったことではない。
Google and Facebook accounted for 24.5 per cent of all ad spend of any type globally in 2018, raking in $144.6bn (£109.8bn) of the $590.4bn total between them. This is up from 20.3 per cent in 2017 and more than double the 10.8 per cent recorded in 2014. The figures come from the international marketing intelligence service, WARC, which predicts a further increase to 28.6 per cent ($176.4bn) this year.
mobilemarketingmagazine.comの記事より
Google社とFacebook社は2018年、世界のあらゆる種類の広告費の24.5%を占め、世界の総広告費5,904億米ドル(約65兆円)のうち、1,446億米ドル(約15兆9000億円)に達しているというのだ。そして2019年の今まで出ている両社の決算を見てみても、さらに拡大を続けている。
別の記事だが、2018年第一四半期、GoogleとFacebookが東南アジアのネット広告の65.2%の市場シェアを占めているという調査が出ていた。筆者としては、インドネシアはもっとシェアを取っており、80%まで占めているのではないかと予想している。
ここまでプロダクト・イノベーションの力が強くなってくると、オペレーショナル・エクセレンスやカスタマー・インティマシーもGoogle、Facebookの傘下に入って、彼らの商品をどのように売るかで差別化を図っていくしかなくなってくる。まだ発展途上の広告市場、インドネシアでは特に。
モバイル広告が伸びている、ネイティブ広告だ動画広告だと言っても、結局は表示のさせ方の違いだけなので、根っこのプラットフォームを持っている企業が、莫大な人件費と研究開発費を投じて、さらにそれを強固なものにしていくのである。
もしかすると、本日の記事は(筆者の個人的な気持ちが文章に表れてしまいw)否定的な印象を持たれてしまうかもしれないが、一般消費者にとっては1つの統合されたサービスを使えることは、非常に便利なことである。筆者自身も今この記事をGoogleやfacebookで情報を集めながら、Macbookで書いている。世の中ではGoogle、Facebookの他に、AppleとAmazonを加えて、GAFAと呼ばれていたりするが、一般消費者からすると誰が運営していようと関係なく、安くて便利なGAFAが展開するサービスを使うだろう。ただ、一日本人として、それが全てアメリカ一国から生まれたサービスであることに、悔しい気持ちはある。
次回は、そのGAFAの力を利用しながら力を強める個人、所謂インフルエンサーと、本日書けなかった動画広告について記事を書いていきたいと思う。