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インドネシアの小売市場【2020年度版】〜業界マップ〜

前回はコンビニ市場を中心に成長するインドネシア小売市場の明るい部分を紹介し、その裏で2015年以降撤退や事業売却が続くという暗い部分を紹介した。明と暗を紹介する中で、数多くの小売事業プレイヤーが登場したが、本日は業界マップを使って、主要企業とその関係性を解説していく。

2020年2月に筆者作成

まず、インドネシア政府が定める、各カテゴリーの定義をおさらいする。

  • スーパーマーケット:400m²以上のスペースで食料品、生活用品等の各種消費財の販売  
  • デパートメントストア:400m²以上のスペースで消費者の性別・年齢に応じた売場での衣料品等の各種消費財の販売 
  • ハイパーマーケット:5,000m²以上のスペースで食料品、生活用品等の各種消費財の販売 

各グループ、カテゴリーを跨いで事業展開する企業が見られる。この中で上場企業は6社である。上場企業6社にハイパーマーケット3強の一角を担うTransmart(トランスマート)を加え、計7社を売上順に紹介していく。(トランスマートの順位は筆者予想)

  1. PT Mitra Adiperkasa Tbk(MAP)
  2. PT Matahari Department Store Tbk(マタハリデパートメントストア)
  3. PT Trans Retail Indonesia(トランスマート)
  4. PT Hero Supermarket Tbk(ヘロー)
  5. PT Matahari Putra Prima Tbk(マタハリプトラプリマ)
  6. PT Ramayana Lestari Sentosa Tbk(ラマヤナ)
  7. PT Supra Boga Lestari Tbk(スプラボガレスタリ)
各種資料から筆者作成

MAP

インドネシアの小売王であり、ブランドビジネスのリーディングカンパニーと言えば、MAPである。スーパーマーケット事業では高級スーパー「The FoodHall」、百貨店事業では日系ブランドの「SOGO(そごう)」や「SEIBU(西武)」、フランスの老舗「Galeries Lafayette(ギャラリー・ ラファイエット)」を展開している。そごうの進出は東南アジア全体で見ても非常に早く、インドネシア1号店のオープンは1990年3月である。2018年の売上高は、前年比116%の18兆9210億ルピア(約2081億円) 。好調のように見えるが、百貨店事業は苦戦を強いられており、2017年に英国系「Debenhams(ディベンハムズ)」を撤退させている。ブランドビジネスの側面では成功しており、特に「スターバックス」「バーガーキング」「ドミノピザ」など飲食ブランドは好調である。飲食ブランドだけで無く、「ZARA」「DKNY」「LOEWE」「MaxMara」「NINE WEST」などファッションブランド、「アディダス」「コンバース」「ニューバランス」などスポーツブランドなど、海外から様々なブランドをインドネシアに持ち込んでいる。インドネシアでは、大規模店舗でしか外資の参入を認めていないため、MAPのようなパートナーに販売ライセンスを供与して進出するケースがほとんどである。

マタハリデパートメントストア

2位のマタハリデパートメントストアと5位のマタハリプトラプリマは、冠名を見てお分かり頂けるように、同じグループである。親会社はインドネシア大手財閥のLippo Group(リッポー)。小売事業ではショッピングモール「リッポーモール」を国内で複数展開している。マタハリデパートメントストアは、創業者のHari Darmawan(ハリ・ダルマワン)が、義理の父親の店舗を購入したところから始まる。1958年、「Mickey Mouse(ミッキー・マウス)」と名付けられた小型店舗から始まった小売事業は、1972年にインドネシア初の近代的百貨をオープンするまでに成長し、マタハリデパートメントストアは1990年代まで市場独占状態の黄金期であった。1990年代後半の金融危機の後、2000年代初頭に現在の親会社であるリッポーに売却される。現在マタハリデパートメントストアは、MAP同様に苦戦する中で、2018年の売上は前年比101.8%の17兆8650億ルピア(約1492億円)を記録し、何とか伸ばしているもののメディアでは売却の話が出ている。背景として、親会社のリッポーが不動産と医療の事業に注力しているからだ。

トランスマート

トランスマートは、2011年にインドネシアの英雄Chairul Tanjung(ハイルル・タンジュン)がフランス系「Carrefour(カルフール)」を買収して、名義変更が行われた大型スーパー(ハイパーマーケット)である。英雄と呼ばれる所以は、彼が華僑ではない土着のインドネシア人であることに起因している。インドネシアの企業がヨーロッパの大企業(の支社)を買収するということで、当時多くのインドネシア人の希望となったに違いない。元のカルフールの進出は1998年10月に1号店をオープンし、直近では2019年12月22日に133店舗目をオープンしたところである。トランスマートの財務情報は公開されていないため、正確な売上はわからないが、ここ1年で約20店舗オープンさせており、2019年度は2位のマタハリデパートメントストアを抜かしていることも十分考えられる。英市場調査会社ユーロモニターによると、2017年の売上高は12億2000万ドル(約1342億円)と予想されているので、2018年は店舗数の伸びから考えて、1476億円程、2019年は1736億円程になると筆者は考えている。

次回へ続く…

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