前回まで3週続けてタピオカ市場について紹介してきたが、簡単にまとめると、台湾の世界各国へのタピオカ輸出は昨年2018年から一気に拡大しており、空前絶後のブームを巻き起こしている日本以外にも台湾ティーブランド「CoCo都可(ココトカ)」「50嵐(ウーシーラン)」など老舗ブランドや「Gong Cha(ゴンチャ)」「Chatime(チャタイム)」の2000年代以降に生まれたブランド達によって、世界展開が加速しているという状況であった。
では、インドネシアはどうだろうか?
インドネシアに強いブログとして、しっかりインドネシアのタピオカ市場を紹介していきたい。
こちらがインドネシアの現地企業が展開する「XI BOBA(シーボバ)」である。写真の商品名は「Salted Caramel Boba Fresh Milk」で、日本語にすると塩キャラメルタピオカミルクだろうか。Boba(ボバ)とはタピオカのことである。値段は24000Rp(約190円)。筆者の飲んだ感想を述べると、塩キャラメル味がしっかり効いていて甘くて非常に美味しかった。
筆者が訪れた時は10人近く並んでいて、ほとんどが写真のようにGojekかGrabのドライバーであった。やはりインドネシアのドリンクスタンドはGojekとGrabの存在が不可欠である。特にこの店のような路面店であれば、店の前にバイクを停めてすぐ並ぶことができるので、Gojek・Grab比率は高くなると思われる。
こちらはショッピングモールに入っている「Tiger Suger(タイガーシュガー/老虎堂)」である。筆者が訪れた際は20人近く並んでいた。タイガーシュガーは楊敏宗によって2017年11月に創業された黒糖専門飲料店である。つまり、前回ご紹介した台湾4大ティーブランドの次の世代である2010年代生まれの新鋭ブランドだ。台湾中部に位置するの台中で生まれたタイガーシュガーのデビューは圧巻で、毎日1-2時間も待たなければならないような長い行列を作り出して大きな話題となった。翌年2018年6月に進出した香港も3時間の行列を作る大盛況で、その後中国本土、東南アジア、東アジア、北米に進出し、現在世界で13の国と地域に150店舗以上展開している。ジャカルタには2019年4月に進出を果たしている。
タイガーシュガー以外にも、台湾新鋭ティーブランドはジャカルタで大人気である。筆者は訪れたことが無いが、筆者の周りで話題になっていたのが、「XING FU TANG(シンフータン/幸福堂)」だ。創業はタイガーシュガーに近い2018年1月。1985年生まれの起業家陳泳良によって生み出された。シンフータンのデビューも圧巻で、行列は2時間待ちで1日6000杯販売の記録を作ったとのことである。1杯50台湾ドル(約180円)とすると、1日108万円の売上ということになる。凄い数字である。各種資料によると、シンフータンは2019年12月現在、海外では10カ国と契約し、100店舗以上を展開。うち60店舗以上は台湾内とのことである。タイガーシュガーと近いスピード感規模感で拡大している。
もう一つ、ジャカルタの最新の台湾ティーブランド「Truedan(ジェンジュダン/珍煮丹) 」を紹介しておく。ジェンジュダンは、高永誠によって2010年に創業され、ジャカルタには先月11月に1号店をオープンさせている。ジェンジュダンは、2017年に独自の黒糖工場を設立してから一気に拡大し、現在準備中のイギリスを含めると、世界13の国と地域に進出を果たしている。そして、2020年末までに台湾100店舗、世界150店舗の目標を掲げているのだ。
タイガーシュガー、シンフータン、ジェンジュダン、2010年代に生まれた新鋭台湾ティーブランドは、味に定評があり、黒糖を使っているという共通点がある。規模に関しても、世界100-150店舗と近しい。しかし、新鋭ブランドが進出するインドネシアも、上位店舗数となると顔ぶれが変わってくる。
インドネシア第1位の店舗数の誇るのは、前回紹介した「Chatime(チャタイム )」である。2011年にジャカルタに進出してから、2019年の12月現在まででインドネシア44都市に300店舗以上オープンさせている。チャタイムは今年、「Chatime Atealier」という新コンセプト店舗をジャカルタ内で4店舗オープンさせており、先ほどの新勢力に対抗する姿勢を見せている。やはり若い世代がターゲット層となると、デザインのアップデートは必要ということであろう。
第2位は、実は冒頭でも写真で紹介している「XI BOBA(シーボバ)」である。シーボバは今年2019年9月に行われたローンチパーティーで半年以内に250店舗をオープンさせると宣言しているので、順調に進むと12月末時点で125店舗には届いていなければならない。シーボバのインスタグラムを見てみると、近々300と上方修正されているので、進捗は順調で100店舗は最低でもオープンさせているのではないかと予想している。小さなコンテナサイズの店舗なので、気づいたらいたるところにオープンしており、筆者もGojekに乗っかりながら数店舗発見できた。
シーボバは台湾から来たわけではなく、インドネシアローカル企業である。運営は、以前記事で取り上げた「Kedai Kopi Kulo(コピクロ)」「Pochajjang Korean BBQ」「Kitamura Shabu-shabu」など合計500店舗以上展開するKulo Groupと、「Bakso Kemon」と「Co Choc」を展開するMitra Boga Ventura (MBV) のジョイントベンチャーである。Kulo Groupはコピクロを2年弱で300店舗に展開した実績があり、MBVもチョコレートドリンクのCo Chocを1年も経たずに100店舗以上拡大しており、両者ともドリンク事業で成功実績を持っている。
第3位もインドネシアローカル企業である。ブランド名は「Hop hop Bubble Drink(ホップポップ)」で、運営はPT Mata Air Boga Lestariである。Bubble(バブル)はタピオカのことで、インドネシアではタピオカミルクティーをバブルティーと呼んでいたりする。ホップポップは1号店オープンが2005年であり、インドネシアでは老舗ブランドだ。店舗数は、ホームページよると66店舗であり、減少傾向にあるようだ。筆者の印象を述べると、味の品質が高く、デザインもオシャレなティーブランドがどんどんインドネシア市場に参入し、その競争についていけないように見える。
第4位は、以前紹介したウーシーラングループのKOI Thé (コイティー)である。インドネシア進出は2013年で、今年2019年10月に50店舗記念パーティーが行われたところだ。勢いとしては、3位のホップポップを来年にも抜かしそうである。
以上、インドネシアのタピオカ市場について解説してきたが、やはり筆者個人的に強く感じるのは、インドネシア人の起業力は凄いということである。日本のタピオカ市場だと店舗数上位に日本ブランドは入って来ない。特に、展開スピードと、それによって伴うリスクを背負う勇気に感服する。また、台湾においても、やはり台湾人起業家のグローバル推進力に非常に驚かされた。台湾ティーブランドの世界躍進は、彼ら自身の企業が潤うことはもちろんのこと、タピオカ工場となっている台湾経済にも潤いをもたらしているのだ。こんなにたくさんの学びの機会を与えてくれたタピオカに感謝したい。