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王興・張涛起業列伝③

物語を続ける前にGroupon(グルーポン)に代表される共同購入型クーポンサイトについて少し解説したいと思う。グルーポン自体は、2008年11月にAndrew Mason(アンドリュー・メイソン)によって開始されたWebサービスである。特徴として、共同購入型のクーポンであること以外に、フラッシュマーケティングという24時間から72時間程度の短時間(フラッシュ)に集客と販売および見込み顧客の獲得が行われる側面があった。期間限定大型割引という劇薬と当時広まりだしたソーシャルメディアの拡散性を利用して、グルーポンは瞬く間に注目を集めて行った。2010年には推定300億円の売上が上がっていたと言われている。そして、その翌年の2011年11月4日に米国NASDAQ市場に上場を果たし、約7億米ドルを調達する。

2011年11月4日、グルーポンは米国NASDAQ市場に上場(businessinsider.comより)

しかし、上場後は市場の鈍化に加えて会計処理問題も浮上し、事業は低迷。2012年第4四半期決算では8100万ドル(約75億円)の損失を計上し、通年でも6700万ドル(約62億円)の赤字に終わってしまった。その責任を取り、CEOのアンドリュー・メイソンは2013年2月末で解任されるまでに至った。日本には、2010年8月にクーポッド(Q:pod)株式会社を買収する形で進出し、出だしのこそ勢いがあったものの、翌年2011年1月にかの有名な「スカスカおせち事件」が発生してしまう。半額割引で販売したおせちが、具材が動く程スカスカで、購入者はインターネットに投稿して大騒ぎになり、消費者庁も動く大事件となった。

その後グルーポンはどうなったかと言うと、NASDAQ市場には引き続き上場しており、直近の2018年と2017年の12月期決算は営業利益ベースで黒字化している。日本のグルーポン・ジャパン株式会社もしっかり運営されており、サイトもスパやクリニックなど美容系のクーポンを中心にグルメ、レッスン、レジャーなどのクーポンも掲載されている。世界で色々な問題が起きたが、創業から10年以上経った現在も続いているのだ。

しかし、よくよく考えてみると、グルーポンは素晴らしいビジネスモデルである。消費者はディスカウント価格で商品を購入できるし、店舗側は期間限定・数量限定で顧客にアプローチでき、さらに事前決済で商品を購入してもらえるwin-winのビジネスなのだ。ただ、マーケティングツールとして威力があるが故に、掲載するクーポンの精査をしっかり行わなければならなかった。消費者は、実物の見えないインターネット上で大型割引に飛びついてしまう。

そんな諸刃の剣のようなサービスに必要なのが、利用者の口コミである。事前に評判を調べておけば、ある程度失敗は避けられる。例えば、ホテルの予約サイトである、「じゃらん」や「エクスペディア」は、ホテルの口コミやスコアを見て予約ができるので、仕組み的に大きな失敗は避けられる。

中国版グルーポンの「美団(Meituan)」を率いる王興も、口コミが大事と考えたのかもしれない。中国最大級の口コミサイトと言えば、張涛率いる「大衆点評(Dazhong Dianping)」である。共同購入型クーポンで競合していた両社は、2015年10月に合併し、中国最大級のO2O(Online to Offline)プラットフォーム「美団点評(Meituan Dianping)」が誕生したのであった。合併直後は、王興と張涛は共同CEOになると発表されたが、翌月には王興がCEOを務める体制となる。

王興(右から3人目)と張涛(左から3人目)たち
(rongdaitong.cnより)

美団点評はBAT(Baidu・Alibaba・Tencent)に続く第四勢力を目指すという高い志があった。しかし、BATの壁は非常に高い。特にAlibaba(アリババ)とTencent(テンセント)の企業価値は世界でもトップ10に入る程巨大である。そこで、美団点評が中心に置いた事業が、フードデリバリーである。実は、美団は合併前の2013年からフードデリバリーに参入していたのだ。

美団点評のフードデリバリー事業「美団外売(Meituan Waimai)」は、スマートフォンアプリでデリバリーしたいフードを注文し、決済までできるサービスである。日本で言うところの、「UberEats」。インドネシアで言うところの 「GO FOOD」。インドで言うところの「Swiggy」である。美団外売は、フードデリバリー市場でもアリババ陣営とバイドゥ陣営と激しく争うことになるが、何とかトップの座をもぎ取り、2018年9月、香港取引所での上場を迎える。口コミサイトという強力ば武器は、フードデリバリーでも活かされたに違いない。

美団点評は市場から325億香港ドル(約4700億円)を調達し、時価総額は約5兆7000億円に達した。そこに張涛の姿は既に無いが、「5年以内にIPOを行い、企業価値100億米ドル(約1兆円)を目指す」という悲願は、優に達することができたのだ。

次回は中国のフードデリバリーにフォーカスし、美団点評の快進撃を紐解いていく。

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