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インドネシアのサブスクリプションサービス(飲食店編)

インドについての記事が3回続いたが、本日はインドネシアに話を戻して、再びフードテックマップを思い出して欲しい。今回テーマとして取り上げるのは、マップの中央下段のMembership(メンバーシップ)のカテゴリである。メンバーシップとは、近年インドネシアでじわじわ広がって来た、飲食店をお得に利用できる会員サービスだ。日本では昨年2019年に新語・流行語大賞にもノミネートされた「サブスク(サブスクリプション)」である。

インドネシアでは未だ携帯代金の90%以上がプリペードで支払われる中、サブスクリプションはまだまだかと思っていたが、実は動画配信サービスのNetflix(ネットフリックス)、音楽配信サービスのSpotify(スポティファイ)やJOOX(ジョークス)など海外サービスを中心にクレジットカードによるポストペイドや自動引き落としのサービスを使うよになって来ているのだ。アプリのダウンロード数を見てみると、Netflix・Spotify・JOOXはiPhoneユーザーが中心にダウンロードされているので、アッパーミドルから富裕層から動き出している模様である。

インドネシアの外食産業も少しずつサブスクリプションの流れが来ている。まず紹介するのは、2017年12月にローンチした富裕層向け会員制アプリ「Club Alacarte」。

Club Alacarteのアプリより

ベインアンドカンパニー出身のFerdinand Sutantoとリーマンブラザーズやクレディスイスなどを渡り歩いた金融エリートのKenneth Lowが立ち上げている。彼らは五つ星ホテルのメンバーシッププログラムのようなサービスをジャカルタの個々のレストランと提携して提供できないかと考えた。そこで誕生したのが、提携レストランで「1 FOR 1(一人分の料金を払うと、もう一人分は無料)」のサービスが受けられる会員サービスである。新しいサービスに関心の高い若者をターゲットとし、最初からスマートフォンアプリを準備してサービスローンチされている。ローンチ当初はレストランだけであったが、最近ではホテルやスパ、美容クリニックなどと提携したり、ホテルからは「Buy 1 Get 1 Free Night(1泊泊まったら、もう一泊分は無料)」や30% 割引などサービスを提供している。

Club Alacarteのアプリより

会員価格は、筆者が約1年前(2019年上旬)に見ていた時は、1ヶ月お試しが199,000Rp(約1600円)で、年間599,000Rp(約4800円)という価格設定であったが、2020年1月に見たところ399,000Rp(約3200円)だけとなっていた。値段を下げなければ難しかったのだろうか。

もしかすると、値段を下げたのは、次に紹介するサービスが大きく影響しているのかもしれない。最近のインド特集でお馴染みの「Zomato(ゾマト)」が提供する「Zomato Gold(ゾマト・ゴールド」である。以前の記事で少し触れたが、Zomato Goldはメンバーシップ費用を払うことによって、Zomato Gold提携レストランにて1+1 on Food(1つ食べたら1つ無料)、2+2 on Drinks(2杯飲んだら2杯無料)などのサービスを受けられるサービスである。

Zomato Goldのホームページより

価格は何と3ヶ月で100,000Rp(約800円)、1年間で225,000Rp(約1800円)である。筆者の周りでは、「1回の利用で(800円を)回収できる!」と話題になった(笑)。クレジットカードかデビットカードを登録しなければならず、自動引き落としとなるので注意しなければならない。Zomato Goldは2018年の11月に1000人限定でローンチしたが、今ではその縛りもなく、提携レストランも2020年1月時点で1450店舗以上とWebサイトに書かれている。レストラン側としては、来客コスト800円で、飲み物か食べ物で利益作れば赤字にはならないということだろうか…。近年GoPayやOVOなどデジタル決済サービスによるディスカウント嵐の中、ディスカウントが無いと集客できないような雰囲気になっており、個人的に少し心配している。

このように少しずつサブスクリプション型サービスが受け入れられているインドネシアであるが、筆者が個人的にインドネシアに出て来て欲しいサービスがある。それは、「GUBIT」や「welnomi」のような、1日1杯ビール無料のサブスクリプション型サービスだ。月額料金はGUBITが980円で、welnomiは500円である。

GUBITのホームページより

ニーズがある理由として、まずインドネシアは宗教的にアルコールの販売が難しい国である。国外からの持ち込みの制限があり、関税も高い。さらに、アルコール販売のためにライセンスを取得しなければならないし、店舗ごとに毎年ライセンス費用がかかる。2014年以降は、販売スペースが小さいコンビニエンスストアではアルコール販売が出来なくなり、気軽にビールなどお酒を飲むことはできなくなっている状況である。そもそもイスラム教徒が8割のインドネシアでは、アルコールは飲まれないのではないかと言われるかもしれないが全然そんなことは無い(笑)。ジャカルタ都心部にある「Beer Garden(ビア・ガーデン」や「Beer Hall(ビア・ホール)」を覗いて頂きたい。大勢の若い人たちがビール片手にごった返している光景が見られる。また、ビール以外でも、筆者は良く現地のインドネシア人や外国人から、「定価以上のお金払うから!(ウイスキーの)響を日本で買って来てくれ!」と言われる。

そんなこんなでビールを中心にお酒のニーズは高いのだが、それに付随してアルコール販売店の情報も少ない。どんなアルコールを夜何時まで飲めるかを網羅した情報源が無いのだ。インドネシアは10時にはラストオーダーを迎えるお店が多いので、何時まで飲めるのかは非常に大事な情報である。もし、その情報が分かって、さらに1杯無料になるのであればユーザーにとって非常にありがたいのである。飲食店側としても、ビール1杯で集客できて、顧客との接点が増えるとお店側としてもありがたい。

ビジネスモデルとしては、ユーザーからサブスクリプション型で徴収しながらも、ビール会社にアライアンス営業ができる。例えば、アライアンス先のビールが飲める店舗を検索できる機能を作るとか。インドネシアのビール会社は、アルコール販売の規制によって大ダメージを受けているので、売上アップの施策は必要だ。もちろん、アライアンスはビール以外にも横展開可能である。また、ビール好きの顧客データが集まれば、大きな予算を持っているタバコ会社にも広告営業可能だ。

終盤は長い独り言になってしまったが、サブスクリプションサービスは今後注目していきたい。

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