LINE MAN(ラインマン)
LINE MANはLINE Thailandで2016年4月にローンチされた荷物の配送やフードデリバリーなど、日常生活をサポートするオンライン型アシスタントアプリである。荷物の配送は、物流のタイ最大手「Lalamove(ララムーブ)」と連携しており、フードデリバリーはグルメレビューサイトのタイ最大手「Wongnai(ワンナイ)」と連携している。日本で例えると、LINEを使って日本通運に宅配や引越しを依頼したり、食べログからお店を選んでLINEのメッセージでデリバリーを依頼するイメージだろうか。Wangnaiとはさらに関係を強化し、ついに2020年7月、LINEはWongnaiを吸収合併すると発表。これによってフードデリバリー事業をますます強化していくに違いない。
実際にWangnaiとの連携強化は吸収合併前から始まっており、吸収合併と同月に、LINE MAN KitchenをWangnaiと共同で立ち上げている。彼らはLINE MAN Kitchenを飲食スペースを持たず、キッチンスペースを共有する、いわゆる「Ghost Kitchen(ゴーストキッチン)」や「クラウドキッチン(Cloud Kitchen)」と呼ばれるニューノーマル時代にレストランの代わりになるものだと説明している。この取り組みは、アジアではゴーストキッチンよりもクラウドキッチンと呼ばれることが多いが、色々と名称化されていることからわかるように、既に参入している企業は多い。例えば、前回紹介したfoodpandaやGrabも展開しており、foodpandaは「Krua by foodpanda」を昨年2019年8月から開始しており、Grabは「Grab KITCHEN」を2019年10月に開始している。
さらに言うと、タイ以外でもクラウドキッチンはどんどん出てきている。当ブログではインドネシアの事例やインドの事例を紹介しているので、参考にして頂きたい。タイのLINE MAN Kitchenに話を戻すと、ローンチ当初は12の人気レストランがキッチンをシェアし、6km以内の注文は送料無料キャンペーンを行うとのことである。
ご存知の方が多いかもしれないが、実はLINEメッセンジャーはタイで物凄く人気なのである。2020年2月に発表されたWe Are Socialのレポートによると、タイのネットユーザーの中で85%がLINEを使っており、アプリのアクティブユーザー数はfacebookやインスタグラムを差し置いてNo.1なのだ。2019年8月にLINEが発表した資料によると4400万人のアクティブユーザー数とのことである。このユーザー規模をしっかり活かすためにも、LINE MAN事業は重要な位置付けになると思われる。
Get Food(ゲットフード)
ドイツから来てドイツ系企業に買収されたfoodpanda、マレーシア生まれのGrab、日本から来たLINE、今まで紹介してきたサービスはどれも海外からやって来たがGet Foodを展開するGETは少し毛色が違う。CEOのPinya NittayakasetwatとCOOのAdisorn Kanjanavarongが2018年1月にGet Thailandを設立し、程なくしてCMOのKorlarp Suwacharangkulが合流し、3人の創業メンバーによって会社が動き出した。実は3人の創業メンバーはそれぞれLINEに関係している。CEOのPinyaはシニアマネージャーとしてLINE MANの立ち上げ、CMOのKorlarpはLINEのマーケティング責任者とLINE MANの事業開発を担当、COOのAdisornは、LINEの提携先であるLalamoveの副社長であった。
創業当初、CEOのPinyaは地元で小さなスタートアップをやりたいと考えていたが、インドネシアでGojekのメンバーに会ってローカライゼーションという使命に共感する。Gojekはインドネシアで、アメリカからやって来たUber(ウーバー)やマレーシア生まれのGrabと戦って勝ち抜いて来た自負がある。GojekはGETにとって、ローカライゼーションという使命のもと、自律的な経営が約束され、テクノロジーと資金の支援を受けられるという、パートナーとしてぴったりと考えたのかもしれない。2018年8月、Pinyaの口からGojekをパートナーとすることで、GETがタイの配車サービスに参入することが発表された。そして、2018年末にGETのプレローンチ、翌年2019年2月にはタクシー配車の「GET Win」、荷物宅配の「GET Delivery」、フードデリバリーの「GET Food」の3つのサービスに注力されることが発表される。
2019年7月には前々回に登場した、タイの王室系銀行「Siam Commercial Bank(サイアム商業銀行)」とGojekとの資本業務提携が発表され、サイアム商業銀行とGETとの連携が開始する。2020年6月には、サイアム商業銀行が注文手数料無料のフードデリバリーサービス「Robinhood」開発を発表。デリバリーはもちろんGETが活用される。Robinhoodはクラウドキッチン参入についても、示唆されるており、コロナ禍によってますます競争が激しくなって来たようにも見える。
ますます競争が激しくなるタイのフードデリバリー市場に目が離せない。