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銀行も参入するタイのフードデリバリー市場

2020年6月8日、タイのサイアム商業銀行(Siam Commercial Bank、略称SCB) は、フードデリバリーアプリの「Robinhood(ロビンフッド)」を開発すると発表した。

SCBはタイ国内3位の資産規模3.1兆バーツ(約10兆円、2020年6月末時点)で四大銀行(バンコク銀行・カシコン銀行・クルンタイ銀行・サイアム商業銀行)の一角を担い、その歴史は1906年にタイ初の商業銀行として王室が設立した経緯があり、今もなお主要株主がタイ国財務省、王室財産管理局である王室系銀行である。バンコクに行かれたことがある方なら、目立つ紫色の看板をいくつも見かけたに違いない。

サイアム商業銀行の特徴ある紫ロゴ

そんな大手銀行のSCBがなぜフードデリバリーアプリに取り組むのか?

実は、SBCはいきなり外食産業に目をつけたわけではない。いくつかの背景とステップが存在する。まず、タイの社会背景として非常に重要なのが、キャッシュレス化の浸透である。給料日になれば、たくさんの人々が自身の銀行口座から電子マネー口座に現金チャージを行うのだ。もちろんスマホを使って。We Are SocialとHootsuiteが2019年2月に共同発表したレポートによると、タイのモバイルバンキング利用率は74%で世界第一位である(ちなみに、日本は同レポートで24%)。日本で言うところの、給料日にみずほ銀行口座からpaypay口座にチャージするようなイメージだが、タイではそれが当たり前になっているのだ。

タイのモバイルバンキング利用率は世界一位の74%

このような背景のもと、SCBはモバイル決済アプリ「SBC Easy」を展開すると共に、その利便性を高めるべく様々なサービス連携している。その連携先の1つあったのが、「GET(ゲット)」というバイクタクシー配車とフードデリバリーを行うサービスだ。タイ版Uber Eatsである。2019年7月に発表されたSCBとゲットの連携は、GETの「GetPay(ゲットペイ)」と、SCB Easyを連動させて支払い可能とすると共に、GetPayとSCBの口座間の送金サービス、GETの運転手向けの保険の提供などが目指された。

そして、2020年、世界を混乱の渦に巻き込む新型コロナウイルスがやって来る。2020年3月、SCBはグループCEO(Chief Executive Officer)であるArthid Nanthawithayaのアイデアのもと、コロナ禍を生き抜くニューノーマルな事業を創るべく、グループのベンチャー部門であるPurple Venturesに1億バーツ(3.5億円弱)の予算を用意。既に提携しているGETと連携し、ニューノーマルプロジェクト「ロビンフッド」は動き出したのであった。

SCBのロビンフッド発表ページより

Arthid Nanthawithayaが注目したのは、30%が相場とされる既存のフードデリバリー事業者の手数料の高さと、1ヶ月以上かかる入金サイクルという2つの課題である。ロビンフッドは、その課題を解決すべく、初期費用無料、配送手数料無料、入金は1時間以内という3つの特徴を携えてローンチされると発表された。どこで資金回収が行われるかというと、将来の飲食事業者に対する融資である。SCBは提携先のGETを通じて、チャージ金額を把握しているので、もともとフードデリバリー市場の可能性を感じていたのかもしれない。そしてこのコロナ禍が起爆装となり、さらにデリバリーのニーズが高まることによって、フードデリバリーを起点に外食産業は発展し、融資チャンスが拡大すると予想したものと筆者は考える。

タイのキャッシュレス化の浸透という社会背景、GETとの提携、新型コロナウイルスを受けてニューノーマルプロジェクト開始。そのような流れでフードデリバリー事業に参入したSCBであるが、もちろんフードデリバリーサービスはロビンフッドだけでは無い。2012年から続くドイツ系「foodpanda(フードパンダ」を筆頭に、シンガポールから東南アジアの覇権を狙うGrabが展開する「Grab Food(グラブフード)」、タイのメッセンジャーNo.1 LINEが展開する「LINE MAN(ラインマン)」など、既に複数のプレイヤーがいるレッドオーシャンである。

タイのフードデリバリーサービス(筆者作成)

実は2020年8月15日現在で、7月ローンチ予定だったロビンフッドは、まだローンチされていない状況である。そして、SCBの提携先であるGET。上の表にも記載があるが、実はインドネシアのユニコーン「gojek(ゴジェック)」のタイ事業としてスタートしたサービスなのである。2020年7月には、gojekブランドで統一すると発表されている。解説して行きたいことを山ほど残しているので、次回以降タイのフードデリバリー市場をさらに詳しく書いて行きたい。

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